後悔は少なめのMY LIFE

労力と金銭は惜しまないstyle

★犀の穴プロデュース「ONE DAY」感想

12/20~24 全8公演

今年最後の推し舞台でした。
始まる前のキャストのツイートやツイキャスからの事前情報によると、とにかく動き回るから汗だくとか黒子(アンサンブル)大活躍とか会話劇のはずなのに立ち回りのシーンがあるとか、何せ初めての団体さん初めての作家さんで想像つかないところへ、キャストのビジュアルですよ。
CR岡本物語さんのオカマが詐欺写並に美しいし、星璃くんが世界を股にかけるジャーナリストなのにめっちゃ2.5次元舞台に出てきそうな衣装だし、フライヤーによると家族を失った中年男とオカマと少女が家族になる話とあって、とりあえずよく分からないけどきっとハートウォーミングな話だろうなCRさんがオカマの時点で面白くないわけないし、と初めてのところなのに最初からハードル上げてしまいました(笑)。


もちろんそれは正解だったわけですが、初日はひたすら笑って終わってストーリーがイマイチ追えませんでした(笑)
確かにフライヤーにある通り、中年男とオカマと少女が出会い家族になる過程を描いたロードムービー的な話ではありましたが。


…とにかく演出が斬新過ぎました(笑)


ツイキャスで言っていた例が
踊る大捜査線」で織田裕二が「何で室井さんは警察官になったんですか?!」と聞いたらギバちゃんの眉間に皺寄せた顔がアップになる
…を舞台上でやってしまう、というもので、成る程そういうことかと合点がいきました。
要するに、映像作品のカット割や視点切替えを全て演者の手によって行っているといえば分かって頂けるでしょうか。車を運転しているシーンだと、前から撮っていて周囲の風景が流れていきますよね、それを舞台上で表現しているのです。
(自分の文章力が無さすぎて分かって貰えるか不安しかないorz)
そして流れていくビルや木々が段ボール製!!!
あらゆる小道具が段ボールなんです。
名刺だの盗聴機だの盗んだデータだの段ボールを四角く切って名称を書くというちゃちさ(…)は、近々に観たものが小道具やセットに凝った作品だったので、そのギャップが新鮮でした。
そしてSEは全て演者の生声。効果音を台詞のように皆が言うんです。
またBC(Black Children=黒子)を駆使したCG効果。
漫画によくあるアッパーカット食らって壁に激突するシーンをスローで再生する演出とかね。
アナログもここまでくると一周まわって新しく思えました。そりゃ動き回るし汗だくにもなるわ。


ストーリーは前述の通り、家族をなくした中年男ハルとオカマのオカと知能が退化した少女ティコが出会って家族になる話ですが、それぞれの背景と絡んでくる舞台設定が国家レベルでなかなかに壮大な展開でした。
とはいえ、超アナログな演出と壮大さが合わないので設定はだいぶふんわりしていて(もちろん架空の国)、普通に映画でやったらツッコミどころ満載だろうな、ていうかそれを緩和させる為のアナログさなのかなという気もしなくはない…
作家さんのやりたいこと詰め込んだら(但し限られた予算内で)こんな感じになっちゃいました、みたいな?(失礼ですかね、すみません)
いやでもやはりそれが可能なのが舞台というものだし、スキルのある演者が集まればそれでいっこの素敵な作品になるのだなあと思えました。
今どきなかなかこういうのってないですよホント。
ハルとオカが仲違いしてティコが仲裁に入るシーン、漸く辿り着いたティコの実家で両親が亡くなっていたことが分かりそれをティコに理解させようとするシーンは毎回涙なしでは観れませんでした。
ティコ役の柳川みあちゃんはアイドルで初舞台ということでしたが、技術的に未熟な部分が生かせる役どころでその中で日々進化していくのが感じられて若い子ってすごいなあと思うおばちゃんでした。
ハル役のデンジーさんは今作の脚本演出の方でもおるのですが、しょぼくれた中年男役が妙にハマっていたし、CRさんに関してはもう言うことないです。オカはオカマなのにめちゃくちゃ男前でした。


BCは若手の舞台役者男女2人ずつ計4人で構成されていて、まあとにかく動く動く。文字通り黒子の役目やあらゆる役をこなしてしまう。
モブどころかゲイビデオのカップルやら軍隊のヘリや戦車の大部隊まで演じてしまう多彩さでした。


ドSな美貌の科学者神崎先生は峰不二子的要素もありかなり美味しいキャラでした。鶴田葵ちゃんがまた美しくてね~ヒールで踏んで!と思わずにいられないSっぷりが素敵でした。
助手佐野の山下さんは去年星璃くんと共演した時に初めて観て、めっちゃイケボな方で気になっていたので今回観れて嬉しかったー。
※余談ですが、昨年のバンタム7で星璃くんが出た「わたしのラベル」初演にて、星璃くんが演じた医者役をやったのが山下さんでした。
惚れた女に何度も騙される非モテくん風ビジュアルに渋い声のギャップ、そして毎回ゴムパッチンに練りワサビ責めという試練をこなされたわたし的MVPです。哲平さん、本当にお疲れさまでした。


推し的にはまさか自分の誕生日(正確には誕生日翌日)~クリスマスの週に女もののパンツを頭に被って巨大ハンマーで吹っ飛ばされたり、ブルゾンちえみの物真似で登場し何度も棒でツッコミ入れられる推しくんを観れるなんて…幸せ…(本当だよ!!)
まあツイキャスで「僕のお客さんは引くと思う」だの「あるものをカッコよく被る」だの何やら不穏なワードが出てきっとHK変態仮面だわと簡単に予想できましたけどね!!笑
ジェイ・ノアはあれです、もっこりのないシティハンター冴羽りょうでした。
確かにこのポジションはこれまでになかったわ…。
パンツ被りつつ立ち回りする姿はいつも通りカッコ良かったし、カッコよくパンツを被ろうと眼帯のようにしたところで正直カッコよくはないけど(…)そういう姿勢はとてもカッコいいし推せる。
ジェイが冴羽りょうなら助手のステラは香織ポジションでした。演じる清水凛ちゃんもお初の女優さんでしたが、可愛い女の子がバシバシツッコミ無双しまくる姿は尊かったです。
ジェイに対してめちゃくちゃ強気で尻に敷いているのにエンディングロールの無声芝居での演技ではちょっとしおらしくなっていたりで胸キュンでした。


気になる部分としては、最後に追い詰められた3人が車ごと崖から飛び降りようとしたのは紛れもなく心中だったことと、ジェイの目的が国同士の膠着状態を壊す為に戦争を起こすことでステラがそれに付き従っていること、なのですが、3人は結果的に助かっているし、ティコは細菌兵器を作る為に体と知能が退化させられたこと、ジェイが己の目的達成の為にハルとオカを犠牲にしようとしたことも含め、ツッコミどころ満載のふんわり設定や、デンジーさんが着せたかっただけ(凛ちゃん談)のコンセプトがまるで行方不明な衣装、そして何より今回の自由奔放である意味演劇の原点のような演出の数々で緩和されているのかなあと思ったり思わなかったり。
最後にハルの元に落ちてきた羽で謎が解けるという終わり方は良かったのではないかしら。


一応、上演時間2時間の予定が初日以外終わったらだいたい15分オーバーで、千秋楽は帰りの新幹線の時間に間に合わなくてダブルコールは見れず泣く泣く切り上げたのが残念でしたが、クリスマスの時期に観れて良かったと思える作品でした。